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クワガタ飼育・採集を中心に自身の趣味・日常を綴ります 

ババオウゴンオニクワガタ CBF3 飼育記録まとめ

はじめに 

みんな大好きババオウゴンオニクワガタ(以下、ババイといいます)。当ブログでもアクセス数が多い記事はババイ関連です。1サイクル回してみたので飼育プロセスや羽化個体紹介に加えて本種の周辺情報についても書いています。

1.本種概要(分類及び生息地)

ババイはモセリの亜種として馬場勝氏によって登録されていますが、ホロタイプ(種の基準となる標本)の詳細な産地は明らかになっていません。馬場氏によれば、ババイと定義できる生息地は、ミャンマー・タニンダーリ(旧テナセリウム)南部のアンダマン海に面した独立峰700‐800mの誰もが驚く場所のみに限定され、タイのカンチャナブリ産はババイではなく、前胸側縁の突出具合からモセリ分布域の最北端の産地であると主張しているようです。従って、タイ産のババイは存在せず、Allotopus moellenkampi moseri が正しい表記になるということ…

では本種の生息地詳細は一体どこであると考えるのが妥当なのでしょうか。①タニンダーリ南部、②海岸付近、③標高700-800m以上の独立峰、④だれもが驚く場所、この4つの情報に基づいて推理したいと思います。まず、本種をブリードしてみるとよくわかりますが、幼虫・成虫ともにとても大食な虫ですから、自然豊かな未開発林でなければ維持出来ないと感じます。その前提で、タニンダーリ南部の海岸付近における土地利用状況を調べてみると、以下マップにあるように、プランテーションを示すピンク色で覆われており、このエリアで本種が生息しているとは思えません。当地で未開発林があり、海岸付近となると、下記マップの赤線で囲った島嶼群に自ずと絞られます。

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更に、このエリアで標高が700m以上あるのは、青く囲ったカダン島北部のみ(国土地理院地図を参照)です。カダン島が含まれるメルギー諸島は、地理学的にはマレー半島を構成する山地の一部が沈降したことによって形成された島嶼群です。したがって、氷河期前にスンダランド全域に生息していた本種が海面上昇によってカダン島に取り残され、子孫を残してきたことは十分に考えられるのではないでしょうか。以上を踏まえると、ババイの産地はミャンマー南部、マレー半島北西部のタニンダーリ海岸西方沖にあるメルギー諸島の大島の一つであるカダン島が有力な産地と考えます。 

 2.種親紹介

種親は2018年11月にヤフオク入手。♂59mm、♀44mmで落札価格は15000円。累代はCBF2。

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オウゴンを始め、外国産のクワガタは幼少期からの夢で穴があくんじゃないかってほど図鑑を見ていたものです。植物検疫法改正前に幼少期を過ごしたクワガタオタクの方々にはその感覚が分かっていただけるかと...着弾してすぐに図鑑を再現!感涙です。ちなみに図鑑はモセリです。

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羽化時期は2018年9月末で後食済み。後食を確認後、少なくとも3-4か月はペアリングさせず個別管理にて成熟を待つのがベストです。目安は16-18gゼリーを1日で綺麗に食べ出してから。なお、真冬での管理となったため、25度まで加温しています。

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ヤル気のある♀は餌皿をも削り出します。加えて飛翔行動が観察出来るとより確実と思います。

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小さなケースに投入していよいよペアリングです。交尾欲が旺盛な種なので雌雄互いが充分に成熟していると直ぐに交接を始め、暫くするとメートガードする様子が観察出来ます。この段でどちらかがヤル気がない場合は間を置いて再ペアリングした方が無難です。

3.産卵セット‐割出

今回使用した産卵セットは4種類。採卵材としての評価を◎〇△×で示してみました。 

Aセット. シーラケース大にカワラ材を充填したもの(1回目)→○
Bセット. カワラ菌糸ボトル(2回目)→×
Cセット.植菌カワラ材(3回目)→△
Dセット. 植菌レイシ材(4回目)→◎

産卵セットAは、3000㏄程入るシーラーケースにカワラ菌糸を充填させる必要があるため、落札してすぐに大夢カワラプロスペック ウェイヴのブロックを調達し、2か月程かけて菌糸を回したものを使用。

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表面はカワラ菌糸に覆われ非常に硬くなっていたので、カッターを使って穿孔穴を作ると、♀はすぐさま潜っていきました。(2018/12/30)

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メスが穿孔してしばらくすると表面から数センチのケース面に空洞が見えるようになりました。f:id:kohya0727tj:20190106154600j:plain

 セットしてから1週間ほで割出をしてみると、卵を発見。

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Aセットからは都合7卵(2プチ)を回収。穿孔穴の底部に等間隔で産んでいるような感じですね。レスポンスはまずまずなのですが、2卵もプチってしまったように、Aセットは割出が難しいです。やはり、カワラが固い(もう少し柔めに詰めれば良かったか)ため、ケースから取り出すのが至難のワザです。オウゴンは空洞を作ってその周囲に産むので、シーラケースの大だと正直カワラがもったいないですね。加えて準備するまで時間がかかるのでスペースとりますし、あまりお勧めしません。

次はBセット月夜野きのこ園のカワラブロックを800ccボトルへ手詰めしたもの。詰めてから1週間しか経過していないボトルで菌糸が高活性であったため、たくさんの卵が菌糸に捲かれ全部ダメになってしまいました。菌糸の活性が落ち着いたものを使うべきでしたね。また、ボトルをカットすれば別ですが、勿体無いよな...割出もしずらいのでこちらもおすすめしません。

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Cセットは、モンスターで購入した植菌カワラ材を使用。(写真撮り忘れた…)こちらからは3卵を回収。油断していて樹皮の下の初齢幼虫を1プチしています… でもね、硬いんすわ。ここの植菌材。硬度にバラつきあるのが玉にキズ。Dorcus向きな感じかな。

Dセットは、西日本こんちゅう社のハイパーレイシ材を使用。最後のセットで別種での余材を使用みたもの。これも写真を撮り忘れましたが、余命いくばくもないメスがすぐに穿孔する好反応。10卵産んだものの無事孵化したのが僅か1頭でしたが、産卵材としてのポテンシャルを感じますねぇ。

4.孵化‐幼虫飼育

25度の温室管理で産卵セットくみ上げから20日ほどで孵化しました(Aセットベース)。温度を低くすると孵化タイミングは遅くなります。20度だとだいたい1か月程かかります。当時は、カワラブロックの割出カスで孵化まで持っていっていましたが、カビ等も生えやすいので、最近は種を問わず湿らしたティッシュを多用しています。

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 大夢、月夜野きのこ園のカワラブロックを500ccもしくは800ccのクリアボトルに手詰めし、1か月以上経過したものへ投入しました。ババイはじめオウゴン系は幼虫時代の成長が早く、6か月程で羽化します。♂であればこの後、2回のボトル交換(1500cc or 2300cc)、♀は1回のボトル交換(1500cc)の予定です。

5.ボトル交換

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投入して2か月程で2本目へ変更。最大は12g ほど。2本目はGLOBALのカワラ茸1500CCへ投入。他の製品に比べて粗粒子、水分量少なめな印象ですが、固く詰められている割に安価でおススメですね。この段におてはだいたい8-13gほどの体重でした。この後、♀はこのまま蛹化まで、♂は2-3か月後に、1500cc乃至は2300ccのボトルへ交換します。

6.蛹化‐羽化

2018年5月下旬ごろから♀の蛹化が始まり、♂の蛹化は遅れること6月下旬から順次スタート。♀は7月末には殆どが羽化。♂は9月末までには全頭が羽化しました。孵化から♀で7か月、♂で9か月程で羽化したことになります。成長早くて楽しいですね。

一方で、最悪だったのが、蛹化‐羽化のタイミングで引っ越しがあり、100km以上の自家用車輸送をせざる終えなかったことです。やはり影響は甚大で、♂は70mmに届くかと思われた大歯の2頭が★に。こればかりは仕方のないことだったので、次世代に期待したいと思っています泣 

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今回羽化できた最大♂(62.7mm)の蛹 。13g

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人工蛹室による管理。左の個体は顎も長く期待度◎でしたが既に★になっています。

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羽化時には大量の水分を出しています。

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羽化直後のババイ。赤味が強く別種のクワガタのように見える。

7.羽化個体紹介

大顎が左右にグゥィーンと曲がり、先端部分が手前に鋭く抉れたカッコいいババイをお見せしたかったんですがねぇ...お目汚しですが以下、ご覧くださいませ。

①62.7mm(♂).2019年10月初旬羽化。今回の最大個体ですが、蛹期間中での引越しが祟り不全。羽が腹部から見えています。次期の種親候補から除外。

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②60mm(♂). 2019年8月末羽化。早くもフセツが欠け。管理期間中の保湿が足りないとこうなるのよね...しかし太い個体で個人的に好きな体型なので来期の種親とします。

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③56.5mm(♂) 2019年8月末羽化。1番発色が良い個体。本個体も次期種親かな。

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④52.5mm(♂) 2019年8月中旬羽化。最小個体。max8gくらいしかなかったのでメスかと思ってました。  

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メスは大体同じようなサイズ感でしたね。特大サイズとかどうやって出すんやろか。

⑤47.9mm(♀)2019年8月羽化。

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⑥45mm(♀)2019年7月中旬羽化 

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⑦45mm(♀)2019年6月下旬羽化

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⑧46mm(♀)2019年7月末羽化

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♀は⑤と⑧が種親かなぁ。

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♂の集合写真。

まだ1頭は幼虫やってます。♀だったら♂単を調達して別ラインやってみるか...

8.終わりに

やはり蛹化の際の引っ越しが何よりも悔やまれます。これが原因で★や不全になったとすれば、ほとんど落ちることなく羽化してくれたはずですし、許容温度帯も幅が広そうな印象があるので、オウゴンの中では比較的丈夫な方なのだと思います。ただ、同じ時期に蛹の状態で引っ越しをして完品羽化している国産オオやタイワンオオなど、Dorcusと比べると繊細、そんな感じでしょうか。

次のサイクルは、2ラインもしくは別の血をいれた3ラインを行うつもり。その際の飼育のポイントは、しっかり性成熟させることを前提として、①産卵木は植菌レイシ材(安定のハイパーレイシ材を使うつもり)を使用、②産卵時は必要に応じて25度まで加温、③採卵のうえ卵を個別管理下で孵化させること、④幼虫飼育時の温度管理(18‐20度)を徹底し、雌雄に応じて2-3回のボトル交換を適切に行うこと、⑤蛹化時は絶対安静等ですかね。列挙してみると、一般的なことしか述べていませんね笑。当たり前のことを当たり前に実行し、次世代こそは70mm越えを目指したいと思います。

9.参考資料及び使用資材

世界昆虫記 (写真記シリーズ)

世界昆虫記 (写真記シリーズ)

 

 

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